『人間合格』(こまつ座@紀伊國屋サザンシアター)

・自分の思想だとか、意見だとかを戯曲にして、演出つけて、役者に表現してもらえるのが、脚本家の醍醐味なんだろうなと。この作品を観て、改めて思いました。イコール井上ひさし氏の思想だと思うのは短絡的かもしれませんが、割と左寄りですか?戦争は愚かしいとは私も思います。
・太宰がダメすぎて笑えてくる。だいたい第1場で、梅が咲くまで生きていようとかそんなん言ってる時点でダメっぽい。佐藤のセリフにもあるけれど、自分のダメさを朝昼晩と書き続けてくれる人がいるから、あたしよりダメな人がいる、あー安心★って思えるからいいのか。いや、それじゃあたしもダメやんか。因みに、太宰は高校の時に『津軽』を読んだくらいです。あと、あたしがあー安心★って思うのは、二ノ宮知子氏の『平成酔っ払い研究所』を読んでる時です。あたしよりひどい酒飲みがいる…!
天皇バンザイ☆から、陛下含め人間みんな平等って、突然1日で変わることに、当時の人々は順応できたんやろうか?中北さんみたいに10日で変われるのかな。人ってそんなもんか。ラスト近く、太宰が「(戦中の辛い時も)思想を曲げずに耐えた佐藤のような奴だけが、人間は平等だと言えるんだ」って叫んでて、まあ理想を言えばそうだろうなと。でも、大多数の人は日和見主義なので、上が変われば自分も変わる。そうしないと生きていけないし。でもそれが暴走すると、戦中みたいになっちゃうから、♪少し離れた所から 中央政府を監視する〜 的な「少し若い水戸黄門になるってことね」(←あんまり良い例えに思えないよ、正子…)という視点を持っていればいいのかな。『黎明の風』と合わせて観るとより楽しめます(適当。時代はかぶってるよ)
・出演者は6人。田根さんと馬渕さんは8役やってはった。大変…岡本健一さん、思ってたより良くて、彼のエアロン(『タイタス・アンドロニカス』)も観てみたかったです。辻萬長さんって、『アンティーク』(懐かし)のイメージで、堅い感じだと思ってたんですが、堅いけれど、酔っ払ったとことか面白くて意外でした。中北役は、昔すまけいさんがやられてて、その時辻さんは佐藤役だったそうな。佐藤の山西惇さんは、理想に燃え、真っ直ぐで、山田の甲本雅裕さんは落ち目になって、戦中のツケが回ってくる姿が悲しい。いい役者さんたち。
・人間の弱点は、常に腹を空かしていることだけでなく、他人のために笑って泣いて苦しんで傷ついて、それなのに一人では生きていけないことだと思う。