生きてるし 死んでるし

grandrevue2007-06-02

主演・森山未來、演出・白井晃。悲しい宿命の男と女の物語って、そら観に行くわ。ということで、『血の婚礼』を観てきました。
・暑くて乾いた国(イメージ)スペインが舞台の、じっとりした暗い話。森山未來の演じるレオナルド以外は、役名はなし。花婿の母とか、少女とか女中とか。
花嫁(ソニン)と花婿(岡田浩暉)の結婚式当日、花嫁は元恋人のレオナルド(今は花嫁のいとこと結婚してる)と逃げ出す。
パンフにもあったけど、男性優位であり、閉塞的で因習にとらわれた村から、若いエネルギーを持った2人は抜け出そうとする。でも、その行く末は破滅。「月」の不吉(としか思えなかったよ)な独白、そして彼女に導かれ、ナイフを手にした花婿がやってくる。。朝の光があたりを照らすのとは対照的に、2人、むしろ皆の運命は暗い闇に飲み込まれる。
・「見つかれば、2人は殺されるだろう」。花嫁の母親(コロス)の暗い独白。渡辺香津美さんの体のなかがざわざわするようなギター・さらさらこぼれる赤い砂、流れる血。それらが、ロルカの「詩的」(キャストみんなそう言うてはりますな)な言葉と絡みあい、とても面白い作品になってました。
森山未來のフラメンコ!!あたし、ダンス見ないしよくわからんけど、体の線きれいやなーと。全力で踊る彼のフラメンコは、エネルギーがほとばしり(ずっとためこんでいた想い。それを爆発させたくてできなくてイライラ)、ドキドキした。森山未來のイメージって、どこか冷めていて、虚ろやったので、レオナルドはハマるなーと。意にに沿わぬ結婚、元恋人を忘れられないから、妻に優しくできない。あぁ。気が短い性格も、嫌じゃなくて、むしろしんどいよね!ワタシもそっち側よ!って言いたくなる。
・ワタシ、ソニン好きやわ… 声が心地いいもん。「優しくて、おとなしい、いい娘」と、父親に評されるけど、元恋人と逃げ出すような、熱いものを心に秘めていた女。情熱的で、時々激昂して。レオナルドにどうしようもなくひかれてしまった感が出てて良かったです。だって、花婿のことを愛してるんやもんねー。花婿はしずくで、レオナルドは黒い河だそうです。
・江波さんは、最初の長台詞が危うかったけど(14ページあるらしいよ)、古い因習側にいる女代表にぴったりでした。失礼な言い方をすれば、雰囲気勝ちですよね。すごい。そう「射るような視線と気」(by陰山さん)。それこそ江波杏子。美しいわ。
・根岸季依さんは、昨日『スリルな夜』で見たので、何か不思議な感じ。彼女もレオナルドの妻の「母」だけど、花婿の母ほど威圧的な存在ではなかった。夫と息子(長男がいたらしい)を殺された、花婿の母の方が、死者の憎しみ悲しみを背負っているから、何だか怖い人になってしまうのだろうか。
陰山泰さんは、ダンディでした。カテコのフラメンコでノリノリで手をたたいてはったよ☆
池谷のぶえさんは歌うまかった。愛嬌はもちろんあるけれど、かなり真剣に花嫁を育ててきたっていうのがわかる感じ。コメディリリーフじゃなかったのね。
・新納くんは、地味に踊りまくり。かっこいいなー☆黒い男は謎めいた存在で、時に花婿の父の亡霊、時に暗闇そのものとなり、物語を進行。
尾上紫さんは少女。33歳らしいけど、まごうことなき少女でした。足を引きずり、ピュア発言を繰り返す。いろんな人に怒鳴られ、怯える様も少女。「月」も彼女が演じてはるんですが、そっちは一転して「女」でした。新納くんとの絡みは、エロくてドキドキ。少女顔やから、余計ドキドキ。見てはいけないものを見てしまったような。例えるなら、幼なじみの女の子が、大人とセックスしてるのを見てしまった高校生男子の気分(どんなや)。2人も動ききれいなー。
・岡田さんは、穏やかでちょっとよわっちい感じ。なので、花嫁を狂ったように捜す様が怖い。ほんと怖い。
・で、浅見れいなが1番目立たない感じやったのですが、寂しくて悲しい感じがすごく伝わってきました。パーティーで、照れながら踊るのがかわいかった。
・カテコで、もう1回フラメンコをやってくれはりました。ソニンも頑張ってた。
・帰り際、振り向いたら1番後ろの席に白井さんが!大阪まで来てはるんやねー。